太沢
シュナン・ブランという品種は涼しいところで栽培されるイメージだったので、何故南アフリカを代表する白ぶどうなのかなと思っていたのですが、そういうことだったんですね。
ところで、南アフリカのワインを取り巻くライフスタイルについて教えてください。
南アフリカの方達は普段からワインを飲んでいるのですか?
田辺
ワインが日常生活の一部になっていますね。
昨年10年ぶりにケープタウンを再訪しましたが非常に驚きました。2000年当時と比べて素敵なレストランやワインバーが増えて、夕方になるとどのお店もワインを楽しむ人で満席でした。そして、とてもお洒落なレストランが多くて、お料理も彼らの大好きなステーキ類は勿論ですが、オマール海老のローストやお魚のグリルなど港町らしく魚介類のお皿もよく見かけました。
今日の料理(鯛のポワレや桜エビのペペロンチーノ)のような魚料理も多く、レモンであっさりした料理にはソーヴィニョン・ブラン種やシュナン・ブラン種のワインを、グラタン系のクリームやバターのこってり系にはシャルドネ種から造ったワインを合わせて楽しんでいるようです。
他にもケープタウン周辺にはインド、マレーシア、インドネシア系移民が多く住んでいるので、カレーのようにコリアンダー、ターメリックなどの香辛料を利かせたスパイシーな料理もとても美味しいですよ。
太沢
バーベキューを週3回ですか!面白いですね。
先生が訪問した時はKWV社の方々とご一緒にお食事をなさって、楽しまれたのでしょう?
田辺 そうですね、とにかく陽気な方達。社長のタイス・ルーブサーさんや日本担当のスカルクさんを始め、とてもフレンドリーな方が多く楽しいひと時が過ごせました。
太沢 KWV社の話しを少ししてください。
田辺
KWV社は1918年創業の会社、正式名称は『南アフリカ・ぶどう栽培家協同組合』で、南アフリカのワイン産業にとても大切な役割を果たした組織です。19世紀後半フランスをはじめヨーロッパではフィロキセラ害が猛威をふるいぶどう畑が壊滅的な打撃を受けたため南アフリカからもワインを輸入していました。それが1910年頃になると被害が落ち着きヨーロッパへの輸出が減少した為、ワインが過剰在庫となってしまい、ぶどう栽培農家が窮地に追い込まれました。
そこで南アフリカにおける主要産業の一つであるワインの元となる生産者を保護する為に政府主導型で4,000人ものぶどう栽培農家が集まって作った農協がKWVの始まりでした。小規模の個人経営ワイナリーに対して非常に大きな力を持っているので国内での販売は禁止され、製造されたワインは全て輸出に回されました。
KWV社は農家と一緒になって良いぶどうを栽培するために力を注ぎ、栽培方法の指導や新しいぶどうの苗を研究しながら、醸造所でも次々と新しい醸造技術を導入してきました。1997年に民営化され現在は株式会社となっていますが、KWV社はその設立以来一貫して自社利益を追求するだけではなく南アフリカワイン産業全体の発展を一番に考え、長年に渡り高品質のワインを造り続けてきたワイナリーです。